学校で漢字を習ったあとに、新聞や本などで同じ漢字を見つけて「あれ?形が少しちがう?」と感じたことがあるかもしれません。
小学校の教科書の書体は主に教科書体と呼ばれる手書きに近い楷書の文字が使われています。子供達が仮名や漢字を習得する際に画数や筆遣いを間違わないように参考に作られたもので、これは自然な手の動きが基本になっています。
一方、一般的に書籍や新聞では明朝体という印刷文字が使われています。
明朝体は明(1368~1644年)の時代に、まず中国で用いられ後に日本でも印刷文字として使われ始めたものです。これは読まれるための印刷文字として、手書きの楷書に基づく書体として用いられるようになりました。
印刷が始まったころは、木の板(木版)に文字を彫って版を作っていました。木版印刷です。そのころは手書きの楷書を模倣した字を版に掘っていたのですが、微妙な曲線などを再現するのに手間と時間がかかりました。
出版印刷業が発展するにしたがって印刷物が大量生産されるようになると、手間と時間を省くために彫りの分業化で複数人で彫りの分担をするようになり彫りやすい字形が求められるようになりました。曲線などをなるべく少なくした直線的で彫りやすい文字や縦画と横画をなるべく直角に交わるようにしたり、そのほかにも読まれることを目的として文字を縦に並べたときに読みやすいような形にデザインされながら、次第に手書きの楷書の形から離れ読まれるための現在の明朝体へと近づいていきました。
ですから、同じ手書きの楷書から始まりましたが書くことを意識して作られた手書き文字でもある教科書体と読まれるための印刷文字では歴史の流れで違いがあり字形の細かいところで一致しない部分があります。
明朝体で➙人・比・令
明朝体と教科書体の違いをこのブログに載せたかったのですが、教科書体の書体がこのブログでは載せられず明朝体だけになってしまいました。すいません。
三つほど例を挙げましたが、明朝体で載せている「人、比、令」の漢字を教科書体で書くと字の形が違います。字の細部に違いがあっても、その漢字の骨組みが同じであれば同じ漢字と文化庁の指針の中では書かれていて、同じ漢字ですがそれぞれどちらが正しくてどちらが間違っているというものではありません。
明朝体の点画の折り方には特徴的な表現の仕方があって、その一つに「下ろした縦画を右に折る際の表し方」に関するものがあります。「比」という漢字の2画目ですが、この明朝体で見ると3画で書くように見えてしまうので総画5画と思ってしまうのですが、実は4画になります。
また、教科書体でも明朝体でもどちらも骨組みは変わらず同じ漢字です。
これは明朝体のデザインがこのようになっているのです。
気をつけなければいけないのは、明朝体で漢字を学習してしまうと画数や筆遣いを間違えて覚えてしまうことです。
文頭でも書いたように文字を学び始めた子供たちが画数や筆遣いを誤って捉えてしまわないよう小学校では教科書体を使用しています。子供達が文字の書き方を学習するには教科書体が適していて漢字指導も教科書体を基に行います。
家庭学習でも教科書体で漢字の筆順や画数などを学んでいくことがまずは大切です。
中学校になっていくと国語の教科書の内容も文章量も増えるために読まれるために作られた明朝体に変わっていきます。調べてみると、明朝体によって画数や筆遣いを間違って覚えてしまうことから各出版会社は書き文字を意識した特別な明朝体づくりなど工夫していることもわかりました。
子供達は書体の違いをよく見つけ「どうして違うの?」と聞いてきます。そんなとき、ご家庭でも教科書体と明朝体の違いを少し理解して心に留めていくと、子供の質問をきっかけに親子で書体の話などもできて良いのではないかなぁと思います。(^.^)
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