小学校の漢字指導では筆順を教えますが、これは文部省(現:文部科学省)が昭和33年に決めた「筆順指導の手引き」が基になっています。学習指導上に混乱を来たすことのないよう筆順をできるだけ統一する目的をもって作成されたものですが、これによって子供達も混乱せずに漢字を習得できるようになりました。
そして今回、新学習指導要領が2020年4月から小学部で全面実施になり第1学年から第6学年までに習う漢字は今までの1006字から1026字となります。
第1学年・第2学年の国語科新指導要領のなかに
「(イ)点画の書き方や文字の形に注意しながら、筆順に従って書くこと」
とあります。
また
『点画の始筆から送筆、さらに、終筆(とめ、はね、はらい)までを確実に書き、筆順に従って点画を積み重ねながら文字の形を形成していく過程を意識して書くことが大切である。そのように意識して書くことが読みやすい文字を丁寧に書こうとする態度を身に付けることにつながる。』
と説明されています。
意識することは大切で、これは文字の習得に限らず意識して自分をより良い方向へと向かわせることができます。
ある程度の筆順の原則を知り意識しながら書いていくと、点画相互の接し方や交わり方、長さ短さ、方向などにも注意が向くようになります。そうすることが字を正しく書くことにつながります。
書くときに次の点画までの自然な流れを指先や身体で感じることができ慣れてくるとスムーズに速く書くことができるようになるのと字形のバランスも整いきれいな字になります。
家庭学習で漢字を覚えなくては!とたた単純に反復するだけでは漢字練習も苦痛になりがちなこともありますが、目安となる筆順に沿って漢字を書きながら「これはどの筆順の原則になるのかなぁ」「あっ、この部分がこの原則になってる!」などといつもと違った視点やその中での漢字に対する発見や面白さをもって漢字学習をしてみるのも一つの方法です。
ただ、毎回すべてに厳密にこだわりすぎて前に進めず疲れてしまうと漢字を書く楽しさもなくなり漢字を書くのがキライになるので少しずつ身につけていくくらいの気持ちでいいと思います。
原則にはいくつかありますが、その中でもとても大切な原則、大原則が2つあります。
1 上から下へ書く。
2 左から右へ書く。
です。
小学1年生の漢字の習い始めはこの原則を声に出しながら意識させて練習していくことが大切です。これは上下左右の概念の理解もしっかり身につくことになります。
また、漢字の成り立ちや意味なども学校で勉強していくので、そういった漢字への新たな知識、視点も加えることで、次に習う漢字はどうなっているのかな?と先への興味・関心が続いていきます。
興味関心を持てることが漢字を楽しく覚えていく方法でもあります。
この筆順ですが、
同じく新学習指導要領のなかで、
「筆順とは、文字を書き進める際の合理的な順序が習慣化したもののことである。学校教育で指導する筆順は、「「上から下へ」、「左から右へ」、「横から縦へ」といった原則として一般に通用している常識的なものである。」
と書かれています。
実は筆順は一般に通用している常識的なものなので筆順の原則はありますが例外もあります。絶対的な決まりではないのです。
絶対的な決まりがないから自由に書いてよいかというと、一般的に通用している原則があり
先ほども新学習指導要領の中にも書かれていたように「点画の書き方や文字の形に注意しながら、筆順に従って書くこと」を学校では学びます。
家庭学習の時にも、教科書や副教材に書かれている学校で習う筆順をまずは身につけていくことが自然な流れだと思います。
まずはシンプルに原則に沿って学校で習う筆順をしっかり学ぶことが漢字を覚えやすく、かつ頭の中も整理しながら学んでいけます。基礎があると、そこから例外を学んだ時に新たな知識も記憶に残りやすくなります。
とくに海外で子育てをするときに、日本にいたとき以上に保護者の方は子供の横にいて勉強を見ていく機会は増えます。保護者の方もこの原則を知っておくと、お子さまの漢字勉強を見ていくときに役に立つと思います。
小学1年生では、家庭でしっかり指導してもらい、まず正しい字形の習得をめざしてみてください。小1段階での文字に関する出遅れは学年を追うごとに広がり意欲や自信にも影響します。
それでは参考に筆順の原則を書いておきます。
筆順の大原則として大切なものが2つあります。
1 上から下へ書く。
2 左から右へ書く。
です。
(赤色:1年生漢字をいくつか書いています)
1 上から下へ:
A:上の点画から➙二、三、工、言
B : 上の部分から➙空、高、喜、客、岩、築
2 左から右へ:
A: 左の点画から➙一
➙川、州、順
➙学、挙、魚、
➙帯
➙脈
B: 左の部分から➙竹、林、羽
➙休、校、語
➙例、湖、術
その他の決まりとして以下に書きます。
小さい決まり
3 横画がさき
横画と縦画が交差する場合、ほとんどの場合は横画を先に書く。
パターン:
A: 横➙縦
➙十、計、古、草
➙土、圧、舎、周
➙士、吉、喜、志
➙七、切
➙大、太
➙木、本、述
➙寸、寺
B: 横➙縦➙縦
➙花、草、茶、荷
➙算、形、鼻
➙帯
➙無
➙共、黄、散、港
➙編
C: 横➙横➙縦
➙用、通
➙末、妹、未
➙耕
D: 横➙横➙縦➙縦
➙耕
4 上の3の決まりが当てはまらない場合。
縦画がさき(横画があと)
A:田、男、町、細、異
B:田の発展したもの
由➙黄、画、油
曲➙豊
角➙解
再➙構
C:王、玉、美、主
D:王の発展したもの
他:
*中の縦画が二つになっても同じ
➙長、進、馬、駅、雑、観
*縦画が上に突き抜けても同じ
➙生、麦、表、清、青、星
*縦画が二つになっても同じ
➙寒、構
5 中が先
左・中・右と三つの部分がある字で、左右が一、二画である場合は中が先。
➙小、少、京、糸、細、示、宗
➙水、氷、緑、暴
➙赤、変
➙当、光、常
➙業
➙楽、薬
➙承、率
*例外:2つ(左・右から中に入ることもある)
➙火・・・秋、炭、焼
➙性、忙
6 外側が先
「かまえ・たれ」のように外側が囲まれている形の字は、外側から内側へ。
➙国、図、因、四、園
➙円
➙内、肉、納、同
➙司、詞、羽
➙広、病
➙日、月、目、田
*注意:区と医の筆順は注意。
7 左払いが先➙八
左払いと右払いが交わる場合、接している場合は、左払いが先。
➙文、父、故、支、収、処
➙人、入、欠、金
8 貫く縦画は最後
字全体を貫く縦画は最後に書く。
➙中、申、神、車、半、事、建
*下の方がまとまっても同じ
➙書、妻
*上の方がまとまっても同じ
➙平、手、洋、達、拝、争
*上にも下にも突き抜けない縦画は、上部➙縦画➙下部の順で書く。
➙里、野、黒
➙重、動
➙謹、勤
*注意:謹と漢との違いに注意。
9 貫く横画は最後
字全体を貫く横画は最後に書く。
➙女、安、努
➙子、字、存
➙母、毎、海、慣
➙舟、船、与
*注意:「世」だけは違う。
10 横画と左払い
*横画が長く、A左払いが短い字では左払いを先に書く。
A:右・・・有、布、希
*横画が短く、B左払いが長い字では横画を先に書く。
B:左・・・友、存、在、抜
他に特に注意するべき筆順
11 原則では説明できないもの。
(1) A : 先に書く「にょう」
➙勉、題、処、起
B:後に書く「にょう」
➙近、遠、道、建、直
(2) A:先に書く左払い
➙九、及
B : 後に書く左払い
➙力、刀、万、方、別
12 広く用いられる筆順が二つ以上あるもの。
(1)A :止、正、足、走、武、
B :上、点、店(上:学校では「縦・横・横」。
:他には「横・縦・横」。
(2)A :耳
B :「みみへん」取、最、職、厳
(3)必
(4)発、登の「はつがしら」
(5)感
(6)馬
(7)無
(8)興
*筆順が二つ以上あるものは、学校で習う筆順をまず覚えましょう。そして興味があれば他の筆順も調べてみてください。
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